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プロジェクトの概要     

    
研究の目的
 国連などが2025 年までに世界の2/3の人口が水不足に直面すると指摘している。日本においても国民1人あたりの降水量は世界平均の1/4と少なく、降水は急峻な地形により短時間で海洋に流失するため、水資源としての利用率も低い。多くの人口密集地域は潜在的な水不足の状態にあり、雨不足・雪不足が続くと容易に渇水となる。渇水は、10 年に2〜3回と頻発しており、おおよそ10 年に1度の割合で深刻な渇水が発生している。今後地球温暖化が進むと少雨・渇水や豪雨・洪水などの現象が起こり易くなることも指摘されている。安定的水資源確保を目的とした人工降雪技術や、渇水対策に即効性のある人工降雨技術に関する研究を早 急に立ち上げ、今後予想される水不足問題・干ばつ等の災害軽減対策を講じる必要がある。本研究では、これまでの研究でその可能性が明らかとなってきた山岳性降雪雲の人工調節手法の高度化を図り、水資源確保のための人工降雪技術の確立をめざす。また、渇水の度に強く望まれている人工降雨について、その可能性を明らかにするための基礎的研究を行う。降水予 測モデルと積雪融雪流出モデル・水管理モデルを連携させた水資源管理技術を確立し、人工降雨・降雪による安定的水資源確保・渇水対策としての有効性を総合的に評価する。
    
研究内容
 本研究では、統計解析、多波長ドップラー偏波レーダ・2波長ライダー・多波長マイクロ波放射計などの地上リモートセンシング、衛星リモートセンシング、研究用航空機による雲・降水の直接観測、航空機および地上からのシーディング技術、高精度・高分解能の数値気象モデル、積雪融雪流出モデル、世界最高水準の雲生成チェンバーなどの種々の手法を用いて、これまでにない総合的人工降雨・降雪研究を実施し、あわせて渇水緩和対策としての水資源管理技術の高度化を図る。研究内容としては、人工降雪の高度化(人工降雪研究)と人工降雨の可能性評価(人工降雨研究)に2分され、これらの研究に先立ち事前評価を実施する。 人工降雨・降雪に使用するシーディング技術に関しては、幅広く調査し最新の情報に基づいて、それぞれのシーディング技術の有効性を評価し、対象とする雲システムに応じた最適なシーディング技術を用いて研究を推進することとする。

【事前評価】
 まず人工降雪および人工降雨の研究対象となる有望な地域・時期を特定するために、過去の気象・水文データを解析し、水資源確保や渇水被害軽減の可能性を評価する。また、大規模な大気循環場の解析やメソスケール気象データの統計的解析により過去の渇水時の天気パターンを明らかにする。

【人工降雪研究】
 寒候期の雲・降水を対象として、各種リモートセンシング技術を用いた微物理構造導出アルゴリズムを開発し、シーズンを通して人工降雪に適する雲の出現頻度を把握する。また、航空機による直接観測およびシーディング実験によって降雪機構を解明し、物理的手法を用いてシーディング効果を把握する。さらに、種々の観測データを用いて統計的評価法を改良するとともに、数値モデルの精度向上を図り、人工降雪効果の定量的評価を可能にする。気象モデルと積雪融雪流出モデル・水管理モデルを組み合わせた総合的水資源管理システムを構築し、人工降雪の水資源確保技術としての有効性を評価する。第II 期には航空機によるドライアイスシーディングが実施できない時間帯を補完するため、地上設置の液体炭酸撒布装置を用いた野外人工降雪実験や気象モデルを用いた液体炭酸・ヨウ化銀による地上シーディング数値実験を実施し、増雪効果を評価する。過去の渇水年を対象に、総合的水資源管理システムを用い、航空機(ドライアイスなど)または地上(液体炭酸・ヨウ化銀)からのシーディングによる人工降雪の水資源確保(渇水緩和)技術としての有効性を実証的に定量化する。さらに、このシステムを用いて人工降雪による広域の環境影響評価を行う。

【人工降雨研究】
 渇水対策として即効性のある人工降雨に関しては、雲生成チェンバーや詳細雲物理ボックスモデルを用いた最も有効なシーディング物質(粒子)の物理化学的特性の同定、ドライアイスなどの他に吸湿性粒子によるシーディング実験も取り扱える高精度なシーディングモデル(ビン法NHM)の開発・改良と、それを用いた数値シーディング実験など、基礎的研究 から着手する。さらに、各種リモートセンシング技術を用いて、暖候期仕様の微物理構造導出アルゴリズムを開発し、シーズンを通したモニタリング観測から人工降雨に適した雲の出現頻度を把握する。渇水時の天気パターンの下で出現する雲を対象に、航空機等による雲の直接観測やドライアイス・吸湿性粒子を用いたシーディング実験を行い、降雨機構を解明し、 シーディング効果の有無(人工降雨の可能性)を明らかにする。第II 期には、実証的な研究を積み重ね、有効雲のモニタリング法・最適シーディング法・効果判定法の改良などの人工降雨技術の高度化を図る。ビン法NHMと積雪融雪流出モデル・水管理モデルを組み合わせた改良型総合的水資源管理システムを構築し、過去の渇水年を対象にシーズンを通したシー ディング実験を行い、人工降雨の渇水対策技術としての有効性を評価するとともに、人工降雨による広域の環境影響評価を行う。

ミッションステートメント
第I期(平成18年度〜平成20年度)

【事前評価】
・過去の渇水要因を明らかにし、人工降雨・降雪による水資源確保・渇水被害軽減の有望な地域・時期を特定する。 ・渇水時の天気パターンを明らかにする。
・シーディング技術に関する最新情報に基づいて、それぞれのシーディング技術の有効性を評価する。

【人工降雪】
・各種リモセン技術を用いた微物理構造導出アルゴリズムを開発する。
・それに基づき、シーズンを通した有効雲の出現頻度を把握する。
・航空機直接観測・リモセン観測によるシーディング効果の物理的評価手法および種々の観測データを用いた統計的評価手法の高度化を行う。
・航空機による最適シーディング法を確立する。
・総合的水資源管理システム(気象モデル・積雪融雪流出モデル・水管理モデルを複合)を構築する。
・それを用いて、航空機からのシーディングによる人工降雪の水資源確保(渇水緩和)技術としての有効性を実証的に評価する。

【人工降雨】
・最も有効なシーディング物質(粒子)の物理化学的特性を同定する。
・吸湿性粒子も取り扱える高精度なシーディングモデル(ビン法NHM)の開発・改良を行う。
・各種リモセン技術を用いた微物理構造導出アルゴリズムを開発する。
・それを用いて、有効雲の出現頻度をシーズンを通して把握する。
・航空機からのシーディング(ドライアイス・吸湿性粒子)による増雨効果を判定する。
・室内実験・数値実験・野外シーディング実験・モニタリング観測の結果を総合的に評価し、人工降雨の可能性について検討する。

第II期(平成21年度〜平成22年度)

【人工降雪】
・最適な地上シーディング法の検討および増雪効果の定量的評価を行う。
・総合的水資源管理システムを用いて、航空機または地上からのシーディングによる人工降雪の水資源確保(渇水緩和)技術としての有効性を実証的に定量化する。
人工降雪による広域の環境影響評価を行う。

【人工降雨】
・最適シーディング法・効果判定法など、人工降雨技術の高度化を図る。
・改良型総合的水資源管理システム(ビン法NHM・積雪融雪流出モデル・水管理モデルを複合)を構築する。
・それを用いて、種々のシーディング方法による人工降雨の渇水対策技術としての有効性を実証的に総合評価する。
・人工降雨による広域の環境影響評価を行う。
・渇水発生頻度(10 年に2〜3回)および自然現象の変動性を考慮すると、直接観測機会の確保、人工降雨・降雪に適した雲の観測、有効雲判別法・最適シーディング法・効果判定法の確立など航空機による人工降雪技術の高度化と人工降雨の可能性評価に3年を要する。
・人工降雨・降雪実験からシーズンを通した総合的なシーディング効果の実証的研究評価までにさらに2年の期間を要する。これらは、我が国の水資源の安定確保・渇水対策を講ずる際の科学的根拠として必要不可欠なものである。

人工降雪技術の高度化
人工降雪技術の高度化
人工降雨の可能性
人工降雨の可能性
研究体制図
研究体制図
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